アレクサンダー・テクニークの創始者

フレデリック・マサイアス・アレクサンダー

アレクサンダー・テクニークの創始者であるフレデリック・マサイアス・アレクサンダー(1869~1955)は、将来有望なシェイクスピア劇の朗唱家でしたが、声が出ないという俳優にとっては致命的な問題を抱え込むことになりました。そしてその問題を解決する為に様々な当時の医療を試みましたが、改善されませんでした。この結果、彼は自分自身でこの問題を解明することを余儀なくされたのでした。

そして8年間に及ぶ根気強い自己観察の結果、“心身の協調作用と動作の為の新しいアプローチ”を発見しました。それらを実践するうちに声の問題だけではなく、彼の全般的な健康状態も驚くほど改善されていきました。さらにこの問題の根本は、彼個人に限ったことではなく、私達人間誰もが陥る可能性のある問題であることも明確になってきたのです。

その結果、彼は周囲の要望もあり、同様の問題を抱えている他の人たちにもこのアプローチを教えることになりました。彼の熱心な生徒の中には作家のジョージ・バーナード・ショウ、思想家のオルダス・ハックスリー、哲学者であり教育者であるジョン・デューイ、といった知識人がおり、中でもノーベル生理学医学賞を受賞したニコ・ティンバーゲンはその受賞スピーチの大半を費やして彼のアプローチを賞賛したことは有名です。

こういった経緯でヨーロッパを中心に世界中の人たちに拡がってゆき、今ではクオリティの高い洗練されたワークのひとつとして教師の交流組織や教師育成学校が世界中にあります。

日本アレクサンダー・テクニーク研究会 代表

谷村 英司 ( Eiji Tanimura )

1953年生まれ

2012年リカ・コーエン女史よりマスター・ティーチャーの認可を受ける。 1985年から国際ヨガ協会の顧問として“日本ボディワーク研究会”を設立し、ヨガにとらわれないでより良い身体の動きと意識の相関関係についての様々なワークを探求する。1990年にSTAT公認教師でATIスポンサーシップメンバーでもある故エゼキエル・アインシャイ氏(ヘズィ)に出会い、彼から1997年にAT教師の認可を受ける。 1994年のシドニー(オーストラリア)、1999年のフライブルグ(ドイツ)、2003年のオックスフォード(イギリス)、2008年と2011年のルガノ(スイス)での世界中の教師が集うAT国際コングレスに参加し、教師達との交流を通して世界のレベルを学ぶ。

AT教師の認可を得たのを機会に1999年に“日本アレクサンダー・テクニーク研究会”を設立し、さらに2006年より、リカ・コーエン女史を顧問に招き、優れた教師陣と共にAT教師育成のためのトレーニングコースのスクールを東京、奈良、大分で開始。九州は、大分そして2009年からの福岡を経て、さらに2017年からは鹿児島で開催し、現在に至る。 国際ヨガ協会が発行するニュースレター“インナームーヴ”を20年以上編集。


著書に「からだを解き放つアレクサンダー・テクニーク」(地湧社)、「Thinking Innermovement 内的運動学とは」(国際ヨガ協会・刊)がある。
奈良県生駒市在住。

日本アレクサンダー・テクニーク研究会の歩み

日本アレクサンダー・テクニーク研究会・代表

谷村 英司

1985年に私、谷村英司を中心として国際ヨガ協会の有志達が集まり、ヨガの枠にとらわれない古今東西の心身相関のワークを研究しようと当研究会の前身である「日本ボディワーク研究会」が発足されました。 そして様々なワークを試み、探求した結果、私達にとって究極のワークがこのアレクサンダー・テクニークでした。私たち人間は身体だけの存在でも意識だけの存在でもありません。それらが有機的につながり合って活動していることは明らかです。そして私たちが活き活きと人生を歩むためにはこの心身相関の健やかな活動が不可欠です。このことを明確に、深く、シンプルに、かつ具体的に示してくれたのがこのアレクサンダー・テクニークだったのです。こういった経緯で私たちの研究対象をアレクサンダー・テクニークひとつに絞り込むことに決め、1999年に「日本アレクサンダー・テクニーク研究会」と改名し、発足しました。そしてこの活動が少しずつ広がっていき、まずは奈良、東京、大分に定期的な勉強会が開かれることになり、このテクニークを研鑽してきました。

さらに2004年イギリスのオックスフォードで世界中のアレクサンダー・テクニークの教師が集うコングレスが開催され、そこで幸運にもアレクサンダー界の重鎮であるリカ・コーエンさんにめぐり合い、私たちの活動を認めていただき、彼女を当研究会の特別顧問として迎えることができました。これを機に年に2度彼女を迎え、集中的なワークショップを続けることによってわれわれのテクニークにも更なる磨きがかかりました。

そして2006年3月には日本人による日本人のためのアレクサンダー・テクニークを発展させる必要があるという、彼女の考えと勧めでアレクサンダー・テクニークの教師を育成するためのトレーニングコースのスクールを最初の研究会が始まった奈良、東京、大分でスタートさせました。これは3年間で1600時間を修了しなければならないという厳しいものですが、教師になるための世界の標準時間なのです。この期間の終わりには、必要条件を満たした生徒は、アレクサンダー・テクニークを教える教師として資格証明書を受理します。それは世界中のあらゆる専門家組織によって認められているものです。

このトレーニングコースの第一期が2009年の3月に終了するとともに第二期のトレーニングコースが始まりました。その時には大分のスクールが福岡に場所を移して行われることになりました。

そして2012年3月にはこの第二期トレーニングコースが終了し、第三期のトレーニングコースが奈良と東京で始まりました。そして2017年には鹿児島でも第四期のトレーニングコースが始まりました。そして第五期のトレーニングコースが東京、奈良、鹿児島で行われており、現在に至ります。これだけ多くの仲間が当研究会に参加し、ATを研鑽する場ができたことに私自身驚いています。というのも何事においてもお気軽に、即席に資格が得られる現代社会において、先ほども話したような長く、厳しい道のりにチャレンジしようとする人はそれほど多くはないからです。もちろん数だけ多いということではなく、内容においても4年に一度のコングレスに参加したり、ATのハイレベルな教師が集まるイスラエルへ研修旅行ツアーをし、常に世界のハイレベルの技術を研鑽してきました。


さらに驚くべき事に、一般的に資格を取ればそれで修了というわけですが、「まだまだ、一緒に学んできた仲間たちと、研鑽を続けたい」ということが起こってきたのです。よく考えてみると、真っ当に学んできた者にとっては当然なことで、ATの探求には、他の芸術や技術と同じように「終わりはない」からなのでしょう。そんなわけで私たちは命ある限り、自分自身を研鑽し続ける仲間としての研究会でありたいと思っています。

Message-メッセージ-

STAT・ISTAT 設立会員
日本アレクサンダー・テクニーク研究会・顧問

リカ・コーエン

この8年間、私はエイジさんのATスクールを年に2度訪問する機会を得て、このスクールの教師には上級のクラスのワークを、生徒にはさらにスキルが上がるためのワークショップを行ってきました。エイジさんのスクールでATを教えることは私にとって大きな喜びです。なぜならこのテクニークを学びにやってくる受講者の一人一人がこのワークに関心を持ち、真剣に取り組んでくださっていることをひしひしと感じるからです。この彼らのワークとトレーニングのクオリティがあれば、ますますATに対する知識と理解を深めていかれることは明らかです。そして日本でのATの発展にこの研究会が重要な役割を担っていると感じています。ですから私自身もできる限り手助けをしたいし、そうできることを嬉しく思っています。今後のさらなるご発展を祈っています。


NPO法人 国際ヨガ協会・元会長(理事)
日本尚美会・会長

松嶌  徹

私が公私にわたり40年以上ご指導ご厚誼いただいている谷村英司先生は、一貫してご自身の内面にその探究心を向け続けてこられました。ヨガの”意味”を探ることから始まったその旅路は、野口三千三やM.フェルデンクライスなど東西の先人たちの叡智を吸収しながら、アレクサンダー・テクニークというアプローチとの出会いによって、ひとつの極地にたどり着かれ、その歩みはなおも止まる気配がありません。なにより素晴らしいのは、その長く険しい道のりをこのように多くの仲間と忍耐強くともに歩んでおられることです。じつに敬服のほかありません。

その谷村先生が主宰される研究会からすぐれた教師を世に送り出してくださることは、私たちヨガを実践し、指導する者にとっての大きな幸運です。教師のハンズオンを通して伝わる方向性が、自分の内面へと向かう旅~道を往くすべての旅~においてなくてはならない指標となるからです。世界水準のワークを重ねておられる教師各位には、寛容なお導きをお願いする次第です。